「食の伝統と文化」(ライフプランニング学科授業紹介)
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ライフプランニング学科の「食の伝統と文化」は、世界各地に存在するさまざまな食文化の発展と多様性を、歴史、経済、環境、社会から理解する科目です。一部、「フードコーディネーター資格」の試験対応の内容も含んでいます。
食べたいものがスーパーになんでも揃っているのはごく最近のことです。長い人類の歴史において、食べものは自分たちが住む地域の生態環境から得られるもの(海が多いなら魚が豊富かもしれないし、平野が大きいなら野生動物の狩猟や農耕が可能かもしれない)、そして近隣に住む別のコミュニティとの物々交換などに限られていました。私たちの食文化の発展には、地域環境の理解と、別地域との交易を含めた社会・経済・政治的関係も重要になります。
講義科目ですが、ほかのフードスタディコース科目と連動して学びを深められるようしているのが特徴です。例えば、「認証制度」に関する授業は、フードスタディ実習と連動しています。(写真は、フードスタディ実習でさらに説明を受け、料理実習で使用するイタリア産ペラガッティーノ・レッジャーノ)
「食の伝統と文化」は、世界中の食文化について学ぶという授業ではありません。世界をいくつかの地域にわけて、それぞれの料理の特徴について学ぶという授業も他大学にはあるかもしれませんが、この授業は食文化を「地域」ではなく「テーマ」ごとに分けて考えます。
例えば、みなさんは「食べもの」と「食べられる」ものの違いをわかりますか?「食べもの」とは、文化的に食べてよいと理解されているものです。一方で、「食べられるもの」は物理的(生物的)に人間が食べてよいものかどうかということです。
食べられると食べものの考察は、「発酵と腐敗」というテーマで扱います。納豆は発酵食品で「食べられる」もので、日本では健康にもよいと言われる「食べもの」です。しかし、多くの人は納豆をその匂いやネバネバから「食べもの」と考えられません。「シュールストレミング」も、その独特の匂いから「食べられる」のに「食べもの」として食されず、生産国のスウェーデン以外では罰ゲームで使われるような扱いです。
(食べてみないとわからないものは、特別企画をして実食します。写真は「シュールストレミング体験会」@フードスタディキッチン)
また、昆虫食は世界中で注目されていますが、日本国内で大きく消費量が増えることはしばらくないでしょう。それは、消費者の多くが昆虫(をひとくくりにして考えて)を「食べもの」とは認識していないです。
(「認証制度」の授業でも紹介するスペイン産の生ハム。こちらもフードスタディ実習と連動し食べて知識を体に取り組んでもらえるようにしています)
「肉食文化」をテーマにした授業では、「肉」が持つ文化的な力について考えます。環境負荷の高い畜産肉の消費の世界的増加が地球温暖化に影響を及ぼしているとされ、動物の扱いかたも命の尊厳という観点から批判が集まっています。そのため、肉の消費を減らすためや健康改善のために、昆虫食や大豆やえんどう豆をつかった「代替肉」の開発と市場拡大が進められています。
しかし、大豆「ミート」って、植物由来の食品なのに、なぜ「肉」売り場に売っているのでしょうか。何より、なぜ私たちは大豆を「大豆」として食べず、添加物なども用いながら「ミート」にして食べることにこだわるのでしょうか。
「文化変容」をテーマにした授業では、いかに文化というものが不変ではなく、自然環境、社会、政治経済の影響を受け、そして影響を与えながら変化するかについて理解を深めます。餡子(あんこ)の歴史(にくまんの「饅」と、まんじゅうの「餡」、なんでおなじ「餡(まん・あん)」なのか)や、ヨーロッパの肉料理、そしてコーヒーゼリー(ボストン生まれだがもうアメリカでは「絶滅」し、ほぼ日本にしか存在しないって知っていました?)などの話をしながら理解を深めます。
変わっていないと思っていても実はすごく変わった。または逆で、すごく変わったなと思っても、本質的なところは変わっていないなというもの。食文化だけじゃなく、わたしたち自身にも言えるかもしれませんね。
文化について考えるということは、食やファッションだけではなく、就職や結婚、家事、育児など生活と人生に関するあらゆることを見つめ考え直す「思考メガネ」のようなものを得られます。
(ライフプランニング学科 濵田)