「読書へのいざない」長谷クラス②~芥川龍之介「桃太郎」を読む~

2019.04.04 国文学科

こんにちは。国文学科の長谷あゆすです。

今回も1年生の必修科目「読書へのいざない」についてお話しようと思いまピロリ~ン♪

あ、すみません。メッセージが届きました。

 

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国文科ゆるキャラの樟次郎くんからこんな連絡が。

彼はいなくなったお兄さんのことを思い出す中で読書に興味を持ち始めたらしく、先日、この科目のことを色々と聞きに来てくれていたのです(→詳細はこちら)。

 

それにしても、ちょうど良かった! 

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おおっ。返事が早い。

 

 

「ということで、またやって来ましたー。」

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樟次郎くんが無事到着。

では、さっそく秋期に行われた授業の様子をふりかえっていきましょう。

 

【長谷クラス2回目。】

樟次郎:えーと、この科目では学生が4組に分かれて4人の先生が担当する授業を3回ずつローテーションで受けていくんでしたね。

長谷:その通り。よく覚えてましたね!

樟次郎:前回ちゃんとメモをとってたんで、ばっちりです。長谷先生の授業では「桃太郎もの」を取り上げたんですよね。1回目は江戸時代の作品でしたけど、2回目は何を読んだんですか?

長谷:近代の文豪、芥川龍之介が書いた短編小説――「桃太郎」です!

樟次郎:えー。「桃太郎と死の秘宝」とかそういうのを期待してました。

長谷:ハリーポッターか(笑) まあ、タイトルは確かにシンプルなんですけど、昔話の「桃太郎」とは内容が全然違うんですよ。ちょっと本文を読んでみてください。 

ちなみに、授業で使った本文は、集英社文庫『河童』(芥川龍之介著、集英社)所収の「桃太郎」です。

 

【芥川龍之介「桃太郎」を読む。】

むかし、むかし、大むかし、ある深い山の奥に大きい桃の木が一本あった。〈略〉

この木は世界の夜明以来、一万年に一度花を開き、一万年に一度実をつけていた。〈略〉

不思議なのはその実は核のあるところに美しい赤児を一人ずつ、おのずから孕んでいたことである。

 

樟次郎:1万年に1度実をつける桃の木かぁ。ファンタジックう~。

長谷:芥川版では、この赤児が入った桃の実を八咫鴉(やたがらす)がつついて谷川に落とします。そして、川下にいるお婆さんがそれを拾うことを匂わせておいて、桃太郎の話をスタートさせるという流れになっています。

樟次郎:なんだかすごい能力を持った主人公が出てきそうですね(ワクワク)。

 

 桃から生まれた桃太郎は鬼が島の征伐を思い立った。思い立った訳はなぜかというと、彼はお爺さんやお婆さんのように、山だの川だの畑だのへ仕事に出るのがいやだったせいである。

 

樟次郎:予想してなかった展開が来たなぁ(笑)

長谷:「仕事に出るのがいや」のあたりがリアルですよね。お爺さん、お婆さんも桃太郎にはすでに愛想をつかしていて「一刻も早く追い出したさ」に準備を整えてやるんですよ。

樟次郎:面白いというか、切ないというか…あ、犬が出てきました。

 

…犬は黍団子と聞くと、たちまち彼の側へ歩み寄った。

「一つ下さい。お伴しましょう。」

桃太郎は咄嗟(とっさ)に算盤(そろばん)を取った。

 「一つはやられぬ。半分やろう。」

 犬はしばらく強情に、「一つ下さい」を繰り返した。しかし桃太郎は何といっても「半分やろう」を撤回しない。

 

樟次郎: 「団子を分割する」っていう発想がただ者じゃないですね。

長谷:ちなみに、この後桃太郎は同じやり口で雉と猿をお供にするんですけど、チームワークがこれまた最悪で…。

(10分後)

樟次郎:ふう~。一気に読んじゃいました。それにしても、桃太郎が飢えたお供をけしかけて平和を愛する鬼たちを虐殺していくっていうのが衝撃的でした。ものすごくダークな話で驚きました。

長谷:その後も、桃太郎が人質に取った子鬼が成長して逆襲を始めたり、例の桃の木になった実から次なる「未来の天才」が生まれる可能性が示唆されたりと、含みのある内容でしたよね。

 

【ワーク① 芥川版「桃太郎」のテーマを考える。】

長谷:では、ひととおり読み終わったところで、この話のテーマを考えてみましょう。

樟次郎くん、こんな感じで「考察メモ」を書いてみてください。

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樟次郎:了解です。「作者が伝えたかったことは何か」的なことを考えればいいんですよね!

(カキカキ…)にしても、読んですぐ「テーマ」を書くってキツいなぁ。授業の時に「時間が足りません」っていう学生さんはいなかったんですか?

長谷:実は、前回の授業終わりに本文を渡しておいて、考察メモを書くところまで各自で準備してきてもらったんです。だから、「音読して内容を再確認→考察メモに加筆する」という流れで進めることができました。

樟次郎:なるほど~…あれ、こっちにあるプリントは何ですか?

長谷:忘れてました。こちらは大正期の国語の教科書(尋常小学国語読本)に載っている「桃太郎」です。これを見てもらって、当時のスタンダード型「桃太郎」と芥川版が全然違うことを確認したりもしましたね。

 

【ワーク② 考えたことを発表する。】

長谷:さて、ここからがグループワークです!

ごらんください。今回は現場の様子をちゃんと写真に撮っております。

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長谷:まず、自分が考えた「テーマ」をマジックで白い紙に大きく書きます。そして、その紙を見せてから「どういうことか」「なぜそう考えたか」をメンバーに説明していきます。

樟次郎:どんな意見が出ていたのか気になりますー!

長谷:じゃ、こちらを見てください。

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長谷:グループ発表の後は、こんなふうに全員が考えた「テーマ」の紙を前に貼りました。

樟次郎:色々ありますね~。

長谷:学生が考えたことを内容で分類してみると、6~7種類くらいに大別できました。中には芥川版「桃太郎」が昔話「桃太郎」の序章として書かれていたんじゃないか、という解釈もあって面白かったです。

樟次郎:「スターウォーズ」方式ですね。

長谷:そうそう。ハリウッド映画の「スターウォーズ」だと、主人公のルークが悪の権化ダースベイダーと闘う話(エピソード4~6)が先にあって、その後に「ダースベイダーが闇堕ちした由来」を描く話(エピソード1~3)が制作されました。それと同じように、昔話「桃太郎」が先にあって、芥川が「鬼が闇落ちして凶悪化するまでのエピソード」を後付けしたんじゃないかっていう解釈ですね。

 

樟次郎:芥川版の最後では、生き残った鬼たちが独立計画のために目を輝かせて爆弾を仕込んでましたよね。ここを見たら確かに「平和主義者の闇落ち(凶悪化)」っていうモチーフがあるように読めます。それに、ラストでは不思議な桃の木がまだ無数に実をつけていて「未来の天才(桃太郎)」がまた生まれるんだ、ってこともほのめかされてましたし…。

 

鬼が人への脅威となった背景には、知られざるドラマがあった――

(悲鳴)「ワー」「キャー」

(炎が燃える音)ゴオオオ…

(子鬼の声)「なんでだよ! 僕たちは…僕たちはただ平和を愛していただけなのに……!

昔話「桃太郎」の過去が、今、明かされる。

 

みたいなナレーションを妄想しながら読み直すと、ひとしお感慨深いです(泣)

 

【まとめ】

長谷:さて、その後は各グループの代表者が前に出て「全体発表」をしました。それぞれに、根拠を挙げつつ自分の言葉でしっかり考えを伝えていたのがすばらしかったです。

樟次郎:読書は一人で楽しむものと思ってましたけど、人の解釈を聞くのも面白そうですね。

長谷:そう思ってもらえたなら嬉しいです! 芥川作品の中には「桃太郎」のように人間の醜さや身勝手さをリアルに描くものもあれば、人間の心の尊さを感動的に描くものもあります。読書の幅を広げていくことで、作者の創作意図や表現方法についても新しい発見があるのではないでしょうか。

樟次郎:ふむふむ。

長谷:ちなみに、授業では「読書を通して浮かんだ疑問が、新たな作品との出会いに繋がったり、文学研究の糸口になったりするかもしれない」という話をして、しめくくりました。

樟次郎:「読書へのいざない」「文学研究へのいざない」に繋げたところがあざといわけですね。

長谷:「読書」の場合、そこから何を考えるかは自由です。一方で、「文学研究」の場合、先行研究にはない新しい角度から解釈を加えることや、自説を裏付けるための論証をすることが求められます。ただし、「読んで、考えて、何かをみつける」という点では、読書の楽しみと繋がっている気がします。そこで生まれる「ワクワク感」こそ、学ぶ楽しさなんだと思います。

……と、語りは尽きませんが(お腹もすいてきたし)そろそろ終わりましょうか。

樟次郎:はーい。今回もありがとうございました!(お昼ご飯何にしようかな…)

 

~長谷クラス② 終~

 

 

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