仮名草子『竹斎』の魅力~古典文学ゼミ・秋学期の授業~

2018.02.22 国文学科

こんにちは。古典文学ゼミ担当の長谷あゆすです。

大学はもう春休みに入りましたが、2回生ゼミの様子を振り返ってお伝えしたいと思います!

 

秋学期に取り上げた作品は、『竹斎(ちくさい)』という仮名草子です。

 

主人公は、何事に対しても投げやりモードになっているヤブ医者の竹斎です。

患者も来ないし、このまま京にいてもなぁ…ということで、竹斎は家来睨の介(にらみのすけ)と旅に出ます。

 

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物語のハイライトは、竹斎が名古屋で行う数々の珍療治です。

たとえば、竹斎はある時、喉に梅が詰まった妊婦を診察し、膏薬(こうやく)を患者の口に貼って梅を吸い上げます

「吸膏薬」は腫れ物の膿を吸い出す薬なのですが、ここではサイクロン掃除機並みの吸引力を発揮しているのが注目されます。

ところが……

 

目と鼻と一所に吸い寄せて、眼玉二、三寸は吸ひ上げたり。

 

膏薬のハイパワー吸引力によって患者の目鼻が口サイドに移動しはじめ、目玉が6~9センチも飛び出した状態

「一体どうなってるんだ!?」

周囲に詰め寄られた竹斎はこう言い放ちます。

 

梅の療治は心得たり。目鼻の事は知らぬ。

(梅の治療は知ってるが、目鼻のことは知らん)

 

と、こうした調子で、怪しげなアイテムを駆使したり頓智を利かせたりしつつ、ユニークな治療が展開されていきます。

 

また、作中に登場する狂歌も、魅力の一つです。

たとえば、清見が関(現・静岡県静岡市清水区)では、竹斎がこんな歌を詠んでいます。

 

はるばるとここに清見が関守もかかる憂き身はさして止めじ

(はるばるとここ「清見が関」まで来たが、関所の番人もこんなにツライ俺のことはスルーするだろう)

 

続けて、睨の介も一首。

 

主殿と我に付き添ふ貧乏神ここに清見が関に止まれ

(ご主人様と私に付きまとう貧乏神よ。お前がこの清見が関に来て足止めをくらうがいい)

 

どちらも「ここに来た」と言い掛けて「清見が関」を読み込みつつ、「貧乏」という自虐ネタを笑いに転じて楽しんでいます。

 

授業では、竹斎が名古屋を出発してから江戸に到着するまでの箇所をいくつかのパートに分け、学生たちに発表してもらいました。

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☝こちらは、秋学期最後の発表者、Sさんのレジュメです。

 

江戸時代の地図をもとに竹斎の進行ルートを確認しつつ、丁寧に注釈をつけています。

また、(この写真からはわかりませんが)レジュメの後半には「考察」という項目が設けられています。

 

そう、大学での古典文学研究は「訳すこと」がゴールではありません

 

「竹斎が立ち寄った土地ってどんなところ?」

「この狂歌、どこがどんなふうに面白いの?」

「『伊勢物語』や謡曲などの元ネタと比べた時、どんなことが見えてくる?」

「古いバージョンの本文(古活字本)と、新しいバージョンの本文(製版本)を比べた時、どんなことが見えてくる?」

 

など、色々な疑問を追究し、作品の面白さを深く考察していくところに醍醐味があります。

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発表準備は大変~! でも、みんな楽しんでます♪

 

3月25日(日)に開催される春のオープンキャンパスでは、2回生ゼミで春学期に取り上げた作品――『仁勢物語(にせものがたり)』についてミニ講義を行う予定です。

 

高校生のみなさん、ぜひ国文学科のブースにいらしてください。

 

(※「竹斎」の画像・本文は『日本古典文学大系90 仮名草子集』(岩波書店)所収・寛永版整本より引用し、踊り字などの表記を一部こちらで改めています。)

 

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