"向田麻衣氏"特別講義

“向田麻衣氏”特別講義

 『化粧学概論』は、化粧が持つ学問的可能性と社会的課題を知ることで、4年間の「化粧学」の学びのベースとなる必修授業です。この『化粧学概論』の授業の一環として、2015年12月9日(水)に 向田 麻衣氏 による 特別講義が行われました。

              

授業の冒頭、司会・進行役である川野 佐江子准教授(本学科)から、向田麻衣氏のプロフィールが紹介されました。

 

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向田麻衣(Mai Mukaida)

 

 

向田 麻衣(むかいだ まい)

 Lalitpur(http://lalitpur.jp/)代表。高校在学中にネパールを訪問し、女性の識字教育を行うNGOに参加。大学在学中は社会学者 小熊英二氏の研究室にて社会学を学ぶ。2008年8月よりトルコにて6ヶ月間のフィールドワークを行った後、2009年にCoffret Project(コフレ・プロジェクトhttp://lalitpur.jp/coffretproject/)の活動を開始。現在までに約5000点の化粧品をネパール、トルコ、インドネシア、フィリピンに届け、延べ1500人の女性達に化粧ワークショップを通じて女性が本来持っている自信や尊厳を取り戻すきっかけ作りを行う。2010年からは活動の拠点をネパールに絞り、2012年は職業訓練を実施。2013年5月にネパール発のナチュラル化粧品ブランドLalitpur(ラリトプール)をスタートし、ネパールの人身売買被害者の女性の雇用創出と自尊心の回復に取り組んでいる。エイボン女性年度賞受賞 ソトコト ロハスデザイン賞 ヒト部門 大賞受賞。

 

 紹介後、学生らによる歓迎の大きな拍手の中、向田麻衣さんが登壇。向田さんのバックボーンと、代表的な2つの活動を中心に講演が進行していきました。

 

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・講演を行う向田麻衣さん

 

幼少期に養われた“世界の価値観”の違い

 向田さんのバックボーンは、宮城県で生活した幼少期にあるようです。森の中のログハウスというユニークな自宅には、学生時代に世界中を旅した母親の友人がしばしば訪れ、ドイツ、アメリカ、フランス……といったさまざまな国籍の人たちとのふれ合いがあったといいます。このような環境で育ったことで、もの心つく頃から世界中のさまざまな文化を受け入れることができる下地が作られたと語られていました。

 

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・幼少期の異文化体験を語る向田さん

 

# なぜ、ネパールだったの?とよく聞かれるんです

 高津亮平さんという社会活動家の講演を聴講したことがきっかけで、17歳の時に高津さんの活動拠点だったネパールを訪問。初めての一人旅と、見知らぬ地・ネパールでの体験は何もかもが驚きの連続だったそう。ネパールへの先入観から、「可哀相」「何か役に立てるはず」と安易に考えていたが、人々が日本よりも幸せそうに感じる瞬間があったり、逆に想像以上に深刻な現実があったり。実際に現地に足を運んだからこそわかることがたくさんあり、考え方が大きく変わったと話されていました。

 

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・『化粧学概論』学生の様子

 

#コフレ・プロジェクトが生まれた経緯について

 長い歴史の中でも豊かな時代といえる現代。しかし、ネパールでは年間約5千人~2万人の女性たちが、今もなお、人身売買の被害にあっているといわれています。彼女たちは、買い手によって「あなたは外に出たら、価値がない」「ここから逃れても生きていくことができない」といった言葉で、尊厳や自立心を踏みにじられていたそうです。そうした女性たちの一部は、現地のNPO法人らの活動によって、シェルターと呼ばれる避難所に救助されています。向田さんはシェルターを訪問し、直接の会話を通じて、何が求められているかを聞き出すことを、ゆっくりと丁寧に進めました。すると、「化粧がしたい」「おしゃれがしたい」という声が聞こえてくるようになりました。はじめはその声を受け止めることに迷いがあったそうです。なぜなら、これまでに貧困国でそのような支援を聞いたことがなく、日々の生活すらままならない現場に、嗜好品である化粧品を持ち込んで良いのか、躊躇する思いがあったから。それでも、自問自答の末に「まずは必要とされることをやろう」と決めて、2009年、ネパールを中心に、化粧品を届け、ワークショップを通じて化粧という行為を広めていく「コフレ・プロジェクト」の活動がスタートしました。それから約2年、「コフレ・プロジェクト」の活動は軌道に乗り、多くの会話や笑顔を引き出すことはできたと思いますが、自立という課題は残ったままでした。そこで、次のステージとして、彼女たちに働く機会を作り出すために、2013年、スキンケアブランド「ラリトプール」を立ち上げたとのことです。

 

# ラリトプールが担う使命

 現在、ネパールの首都・カトマンズにあるシェルターで暮らす若い女性たちは、「ラリトプール」の製品に使用される飾り紐(岡本菜穂氏によるデザイン)を作るお仕事から始めています。働く経験を通じて、彼女たちが自立と尊厳を取り戻すことを目的としているそうです。「ラリトプール」での仕事を通じて、大きな成長を遂げた女性が現れるなど、着実に成果を上げていること。また、ネパールの現状や「ラリトプール」の製品に使用されている原料の調達秘話などもお話いただきました。おもな原料であるヤクミルクの生産地訪問では、首都カトマンズからバスに乗り込み、荒れた道を約7時間走行したことや、やっとの思いで到着したチーズファクトリーで働く人々や小ヤクたちとの交流のお話。それらを通じて、「強く優しく誠実なネパール人の姿や、向田さんのものづくりへの熱い想いが感じられました。

 

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・ラトリプールの製品

 

 

続いて、学生との質疑応答の時間を取ってくださいました。その中のいくつかを紹介させていただきます。

 

「美しいとはなにか、それぞれの国の美意識の違いについて教えてください。」

向田さん:「とても難しい質問ですね(笑) 。「何が美しいのか」には、哲学、社会学、個人の感覚など、さまざまな切り口がありますよね。そして国ごとの美意識も。例えば、ネパールでは、人間以外の生物、大自然が生活に密着しているんです。自然の中に美が存在している。造形美ももちろん美しいのですが、ネパールの自然の中にはより崇高な美しさを感じますね。

 

「オーガニックを使った化粧品を生産する中で、香りやこだわりはありますか?」

向田さん:「ヒマラヤ原産の “ワイルドハーブ”を使うというこだわりがあります。ネパール産の原材料を発掘することはもちろん、その原材料を商品に適切に使用することもこだわりです。例えば、リラックス効果のあるハーブ・ジャタマンシ―はマスクに垂らして使ってもらったり、筋肉の疲れをとるアンソポーゴンはバスソルトに使用したりしています。」

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・学生からの質疑応答の時間

 

 学生からの質問に続き、教員代表として、本学ファッションビジネス研究室の加藤道彦教授から、「苦悩を淡々とこなす向田さんが、心を研ぎ澄ますために行っていることは何なのでしょうか」という質問が投げかけられました。これに対し向田さんは、「心を研ぎ澄ます方法は、リラックスをすることです。落ち着いてふわっとしていたほうが物事の判断ができる。日本の価値観が通用しない場所で、生き延びるために体得した方法ですね(笑)」とお答えいただきました。

 

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・「その一歩を踏み出して!」とエールを送る向田さん

 

 最後に、聴講の学生たちに対してメッセージが送られました。「興味があることは何でもやってみて下さい。例えば、“ネパールが好き” “旅行が好き” “ピアノを弾きたい” “フラメンコを踊りたい”、これらは私が今やりたいこと。全部やればいいと思うんです(笑)。優先順位をつけてしまうと、後ろ髪をひかれてしまい、「違う道があったのでは」と感じてしまいます。小さくてもいいので“ まずは、その一歩を踏み出してみる ”ということを、若い皆さんにお伝えしたいです。」というエールで、特別講演の幕が降ろされました。

 

 

 

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